さっちの雑記帳

今のところは現代ギリシア語に関する記事を上げると思います。

マイナス×マイナス=プラスの一行証明

なぜ $(-1)\times(-1)=1$ なのか、負の数を習った際疑問に持つ人は多いですよね。「後ろを向いてから後ろに進んだら前進」とかでふんわり説明されることも多いですが、ちゃんと数学的に証明できるものです。もっと簡潔な証明もありますが、今回は $(-1)×(-1)=\cdots =1$ と、イコールでつなげるだけで $(-1)\times(-1)$ を $1$ にしたいと思います。かけ算をガウス平面上の回転と見なすことはせず、実数(や整数)のみでも通る論理で証明したいと思います。ひとまず証明をお見せしてから詳しい説明をしますね。

証明

\[\begin{array}{l} & (-1) \times (-1) \\ =& 0+(-1)\times(-1) \\ =& \{1+(-1)\}+(-1)×(-1) \\ =&1+(-1)×1+(-1)×(-1)\\=&1+(-1)\times\{1+(-1)\} \\=&1+(-1)×0 \\=&1+0 \\ =&1. \end{array}\] 

使う条件の説明

上記証明で使う前提条件としての式は以下四つです:

1. $n+0=n$

2. $n\times 1=n$

3. $n+ (-n) = 0$

4. $l \times (m+n)=l \times m + l \times n$

条件1~3はそれぞれ $0$, $1$, 負の数の定義です*1

$n\times 0=0$ も使ってはいますが、性質として仮定しません。上記の性質のみから導出できます。そのワンライナー証明も注釈に書いてみたので、気になれば見てってください*2

さて、上記の式を使って証明を一行一行追っていきましょう。

詳解

\[ \boxed{  \begin{array}{l} & (-1) \times (-1) \\ = & \textcolor{red}{0} +(-1)\times(-1) \end{array} } \]

条件1 ($n=n+0$) を使って $0$ を出現させました。

\[\boxed{\begin{array}{l} & \textcolor{red}{0}+(-1)\times(-1) \\ = & \textcolor{red}{\{1+(-1)\} }+(-1)×(-1) \end{array}} \]

条件3 ($0= n+ (-n)$) を使い $1$ と $-1$ を出現させました。

\[\boxed{\begin{array}{l} &\{1+ \textcolor{blue}{(-1)} \}+(-1)×(-1) \\ = & 1+\textcolor{blue}{(-1)×1}+(-1)×(-1)\end{array} }\]

条件2 ($n\times 1=n$) を使って $1$ を出現させました。

\[\boxed{\begin{array}{l} &1+\textcolor{green}{(-1)×1+(-1)×(-1)} \\ =& 1+\textcolor{green}{(-1)\times\{1+(-1)\} }\end{array} }\]

条件4 ($l \times m + l \times n =l \times (m+n)$) を使い第二・第三項をまとめました。ここで $(-1)\times (-1)$ が解体(?)されましたね。

\[\boxed{\begin{array}{l} &1+(-1)\times \textcolor{orange}{\{1+(-1) \} } \\ = & 1+(-1)×\textcolor{orange}{0}\end{array} } \]

$n+ (-n) = 0$ でまとめていきます。もう"見え"ましたね。あとは $n\times 0=0$ と$n+0=n$ を使って証明終了(๑╹ω╹๑) 

\[\boxed{ 1+(-1)×0 = 1+0=1 } \]

終わりに

以上は整数で話をしましたが、特に $l, m, n$ が整数であることは要求していません。有理数でも実数でも複素数でも全く同じ話ができます。というか乗法(かけ算)の可換性も(多分)要求してないので数である必要すらなく、行列など一般の環でも同じ話ができると思います。単位行列 $I$ に対して $(-I)^2 = I$ とか。まあ、だから何だという感じですが……。

今回の記事は「数字であそぼ。」という漫画で見た証明をワンライナーにできないかなァ~と考えたものです。

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$(-1)\times(-1)=1$ の"素直な"証明。絹田村子 著「数字であそぼ。」3巻122pより。

上記の漫画はこちら↓

 

*1:他に、一応結合律$(a+b)+c=a+(b+c)$も使いますね。詳解節の青字と緑字の行の間です。

*2:\[\begin{array}{l} & n\times 0 \\=& (n\times 0) + 0 \\=& (n×0)+{(n×0)+(-n×0)}\\=&n×(0+0)+(-n×0) \\=&(n×0)+(-n×0) \\=&0. \end{array}\]なお、$-n\times 0$ は $n\times0$ の和に関する逆元、つまり\[ n\times0 + a = 0 \] を満たす $a$ です。